あ、1本いいっすか?

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2010/03/21

電子書籍と紙の本(1)

投稿者 Chijun   3/21/2010 0 コメント

連載になるかどうか分からないけど,とりあえず(1)なんて付けてみた。

わたしはどちらかといえば本をそれなりに読んできた人間なのではないかと思うのだが,ルビ(ふりがな)に使われる仮名が,「ゃ」「っ」などの小さな文字を含め全て大きな文字である,ということに気づいたのは最近の話だ。実に恥ずかしい。(しかし,これ読んで気づいたひとも必ずいるはず・・・)

わたしはいま,「ゃ」「っ」と書いた。最初「ゃ」 「っ」と書いてみたのだが,二つのかぎかっこの間が離れすぎていてまぬけに見えたので,「 」を半角ものに直してみたのだ。「全角」(=1)や「半角」(=1/2)はパソコンをふつうに使っている人なら誰でも馴染み深いだろうが,これが本格的な組版(「印刷の一工程で、文字や図版などの要素を配置し、紙面を構成すること」by Wiki)になると,「三分」(=1/3)や「四分」(=1/4)のサイズなどまで調整することができる。こういうネタは広げればいくらでもあるのだが,要するに,本の紙面には,読者に意識されないような細かいところで,美しく,読みやすくするための知恵がいろいろと働かされているのだ。

「電子書籍」にまつわる話が,最近実に賑やかである。iPhone,Kindle,そして近日発売予定のiPadなど端末の充実が進むに連れ,これまで何度か頓挫してきた「電子書籍」が,どうも今回は本当に一般に浸透していきそうな勢いである。Amazonでは,誰でも簡単に,文章をデータとして登録することで自費出版が可能になる,という話もあるようだ。かくいうわたしも裁断機とドキュメントスキャナを購入し,棚を占領している本のうち,まずは文庫本から電子化作業をちくちくと進めている。裁断機でバスンとひと裁ち,スキャナでビュンビュン読み取るのに,一冊10分とかからない。きっとiPadも発売と同時に買うであろう。

これはある意味おかしな話で,出版社から読者の手元に届くまでにデータを紙に印刷したものを(元原稿が手書きのものもまだあるけど),また読者が手元でデータ化する,というこっけいな事態になっている。実際そう感じた人たちが,「著者→出版社→組版所→印刷所」という本を作るまでの流れの中で,人によって程度は異なるようだが,総じて「下流にいくほど不要である」という意見をあちこちに書いている。極論すれば,「パソコンがあってインターネットできれば,誰でも作家」ということになるだろうか。確かに,無名人わたしもここにこうやって,素人の手すさびのような文章を,不特定多数の読者の目に安易にさらすことをしている。

たとえば出版社(=編集者)が必要か否かという議論はおもに,「本の内容をブラッシュアップすること」に焦点がおかれているようだが,長い紙の本の歴史の中で培われた技術,たとえば上で簡単にだが述べたような,気づかれないところで読みやすくするような技術の蓄積についても,もう少し触れる人がいてもいいんじゃないかと思う次第です。
 

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