あ、1本いいっすか?

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2011/03/21

カンナとカカシ(11)

投稿者 Chijun   3/21/2011 0 コメント
しかたなくカカシはひとりで歩きだした。だれもいなくなるときゅうにさびしくなって、とたんにカンナのことが頭に浮かんでくる。最後は13を押すのよ、ちいさなカンナはいっていた。けれどもう、33回のうちなんどエレベーターを乗り継いだのか分からない。もう、どうしていいか分からない。優しそうなおにいさんが答えてくれたケータイも、ふたり組のかたわれに取りあげられたままだ。



だれもいない廊下を、自分を元気づけるように、カカシはステップをふんで歩きだした。すると今度は、ちかくにだれもいないことが、ひどくカカシを安心させたんだ。きっと、ここのやりかたにも慣れてきていたんだね。まるで酔っぱらいのように、カカシは踊りながらすすんでいった。カカシがまわればかべもまわって、それでだんだんたのしくなって、ついには、あか、しろ、きいろの花火がまわりでくるくるはぜるようだ。まわればまわるほど、どんどんカカシはきもちよくなる。この花火がかたちになって手に持つことができたなら、ぼくはカンナをよろこばせるだろう。そんな夢みたいなおはなしも、きっとここでならできるにちがいない。ああひとりきりひとりきり、なんてきもちがいいのだろう。……



へとへとになるまでまわってようやくカカシがまわるのを止めると、ついさっきまでいたはずの白いちめんのつめたいきゅうくつな建物はどこかにいってしまって、そこはほんとうに気持のいい、ひろびろとしたスペース空間になっていたんだ。

みどりの芝生がいちめん、ちゃんとおなじ長さに刈りそろえられている。

あかしろきいろのお花がみわたすかぎり咲きほこっている。

見あげると天井にはぽっかりまるい穴があいていた。その穴は空にむかってはてしなくつづいていて、とおくなればなるほど穴はちいさく見えるようになって、ながいながい吹き抜けのかなたには、おおきな光のかたまりがさんさんとかがやいていたんだ。
カカシは、ひさしぶりに太陽を見た気がした。
太陽の光が舞い降りるきれいなお庭のまんなかに、きらきらとかがやく池があってね。カカシはさそわれるように池にむかって歩き出した。すると近づけば近づくほど池のむこう岸がとおくなり、ついには果てにみえないほどになってしまい、カカシが池の目の前にたどりつくころには、深い青がまるでおだやかな海のように広がっていたんだ。

とおく、なみひとつない水面のかなたにぽっこりちいさなボートが浮かんでいる。そのうえにはどうやら、男のひとと女のひとがふたりきりでのっかっているようだった。

 

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