あ、1本いいっすか?

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2011/05/01

カンナとカカシ(12)

投稿者 Chijun   5/01/2011 0 コメント
とんでもなくおおきな池をちょうど見晴らす位置に、まっしろいベンチがすえつけられていてね。カカシはそこにすわると、ほとんどうごいているのかいないのかもわからないほどとおくにあるボートをながめていたんだ。ひさしぶりに浴びるあたたかいひかりとおだやかな水にいつしか時間をわすれて、カカシはふと眠りにおちこんだり、そうかとおもうとベンチのうえにもどったり、またうとうとしたりを何度も何度もくりかえしていて、どれだけ時間がたったのかいったいどっちが夢なのかついにはわからなくってしまうほどだったけれど、それでもそこは、とにかくとってもきもちがよかったんだ。

ああきっとここが楽園なんだろう……。

そうにちがいない、となぜだかカカシにはわかってしまってね。いつのまにかじぶんがカンナにおしえてもらった場所にきていることにきづいたんだ。

こんなにあたたかいきもちのいい場所なら、きっとおいしい木の実ができるにちがいない。カンナはよろこんでくれるだろうか?
まだだいじな実をとるまえから、もうカカシにはカンナのよろこびが目の前にあるようだった。



カカシはようやく起き上がり、見なれない、しかしどこかなつかしいこの風景を注意深く観察しだした。木の実というからにはとりあえずなにか木があればと木を求めたけれど、みわたすかぎりそれらしいものは生えていなくてね。カカシのすねをこえない、背丈のひくい花々が咲いているばかり。水辺にちかづくと、こんどはすきとおるようなエメラルド・グリーンの水草が目にはいる。水草のひたる池の水ははかないガラスのように透明で、とおくとおくのボートがすこしでもうごけば、もうそれだけで罅われてしまいそうだ。
カカシはしずかにしずかに手をおろし、そっと水草にふれてみる。するともうそれはまるで奇跡のようにやわらかくて、すぐにカカシの手をのがれてしまう。さいしょはやさしく、水草を追いかけるのに夢中になってしだいにはげしくみずをかきまわしていると、とつぜんびりびりと手が痛んだ。どうやらみなぞこにある石にぶつけてしまったらしい。
こんなにきれいな池のなかにある石は、さぞうつくしいにちがいない。そうだ、まるで宝石のようにちがいないと、その石を手にとっていろいろ角度を変えながら見てみる。すると、石のあちこちからとつぜんにゅっとやわらかいものがとびだしてきたんだ。おどろいて石をほうりだし、そのいきおいでみなぞこの砂がたつまきのようになっているのがおさまるまで待つと、そこにあらわれたのはカメだった。カカシが石とおもっていたのは、じつはこうらだったんだね。
そうとわかると逃げないうちにあわててつかまえて、あたまをぐっとちかづけて眼をおおきくひらいて見た。するとびっくり、手のひらにのるほどのちいさなこうらから、三つの頭がとびだしていたんだ。両脇の頭はふつうの大きさで、まんなかのは豆みたいに小さいけれど、よく見ると両脇のとおなじかたちで、それをそのままちいさくしたものだった。まあ、なんとぶきみなカメがいたものだ。
カカシはまたまたカメをほうりだし、手についたぬめぬめをとりはだをたてながらどうにか拭いおとそうとした。カメの方はあわれにも白いはらをうえに向けて、四つ足をばたばたとやっている。

「おいおいまたかよ」
「僕は蛇のように忌み嫌われているんだ……」
「ぶえっくしゅん!」

三ツ頚がてんでばらばらにしゃべりだしてね、いっぺんにその場はにぎやかになった。
 

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