あ、1本いいっすか?

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2010/05/07

電子の本と紙の本(2)

投稿者 Chijun   5/07/2010 1 コメント
(2)と銘打っておきながら,(1)とはタイトル変えました。(1)は「電子書籍と紙の本」でしたが,今回は「電子の本と紙の本」としてみました。
「名付け」というのは面白いもので,新しい,それまでにないものや概念が出てきたときに,それに合わせて造語するという方法もありますが,いずれにせよ,既存の,ありあわせの言葉を使ったり,組み合わせたりして,何とか名前をつけようとがんばるわけです。
そしてがんばった結果,ときにおかしなことになりますよね。「電子書籍」というとひとまとまりの名詞として違和感が見えにくいですが,「電子の本」というと「あれ?」となりません?そう,今流行の(そしてこれからますます流行るであろう)「電子書籍」って,形もないし,「ページ」ったってデータ上で擬似的に作られたインターフェースに過ぎないし,書籍=本じゃないんじゃない?…と,立ち止まって考え込んでしまいます。
そして同時に,わくわくするわけですね。未知の部分が多いゆえに,いったいどうなるんだろう,なにはともあれいいものになってほしいな,と大いに期待を寄せるのです。
電子書籍(書いていていちいちもどかしいです)の話題が盛んになる前,九十年代後半からゼロ年代前半にかけては,「本離れ」がずいぶん口やかましく騒がれたものです。実際文字通りの意味でいえばみんな「本」を離れつつあるのでしょうが,「本離れ」という問題意識の主眼が「ある一定のまとまりをもった文章を読まないのはいかん」ということだとすれば,実はそんな心配は杞憂に過ぎないといえるのではないでしょうか。というのも,「ある一定のまとまりをもった文章」は日々大量に生産され消費されているからです。ネット上で。この私の文章とておなじこと。こうなってくると,「本離れ」との戦いというのは,一体何ものと戦っているということになるのでしょうか?ひょっとして相手のいない一人相撲?
しかしあまり楽観的になって「電子書籍万歳!」とだけいっているのもあまり芸がありませんね。「書く」が「打つ」に変わり(これはもう一昔前の話ですが),「紙」が「電子」に変わる。手段や媒体が変われば,中身も変わらずにはいられません。ワープロの使用とともに読点の多い文章が増えたとか,ブログ・携帯小説・メールの流行とともに一文が短くなり,改行が多用されるようになったとか。ひとつの文がうねってねじれてどこにたどり着くかも分からぬままじっと息を詰めてもだえて考え込んで追っかけてようやく句点にたどり着いてほっとする,そんな重厚感のある文章になかなかネット上では出会えないなあ…と思っていたら,どうも最近はそうでもなくなってきてません?新聞や雑誌,あるいは硬派な書籍に劣らないような鋭い論考をブログ上で発表されている方がどんどん目につくようになり,ますます「本離れ」との戦いが,ドン・キホーテ的な滑稽さ(悲壮さ?)を帯びてきているようにも思われます。
果たして「本」はこれからどう変質していくのでしょうか。見たこともない発見に驚き呆れ,なおかつ感動をもたらしてくれる,そんな文章との出会いを楽しみにしています。
 

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