あ、1本いいっすか?

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2011/01/25

カンナとカカシ(9)

投稿者 Chijun   1/25/2011 0 コメント
そういわれるときゅうに恥ずかしくなって、カカシは一刻もはやくトイレに入ってしまいたくなった。廊下のかべには男の人の絵も女の人の絵もかいてはなかったけれど、さすがにアヤタンとおなじところに入るのはおかしい。だからそのとなりのドアにむかって走った。
「あぶない!」ちいさくさけぶミカチンの声が聞こえたのもつかのま、カカシはぬれた床に足をすべらせてすっころんでしまった。掃除したばかりなのだろうか? それにしてもずいぶんぐっしょりぬれている。
かべをすり抜けたその部屋のなかには、さらにドアがたくさんあって、どうやらおしっこをするだけのところはひとつもないようだった。ここのドアもやっぱりみんなただの『めじるし』なのかな? ひととおりドアをしらべてみると、カギのところがみんな赤くなっていて、カカシがさいごにたどりついたドアだけカギのところが青くなっていた。うん、きっとここならだいじょうぶ。こんどはゆっくり歩いて、カカシはドアをすり抜けた。そこには見なれたトイレがあり、おしっこをするだけだったけど、カカシは便器にこしかけた。すると、

「もういい加減にしろよ!」

とつぜんドアの向こうから女の人のどなり声が響いてきた。しゃかしゃか床をこする音もする。掃除のおばさんだろうか?
「ったく、なにかんがえてんだよ! 見りゃあわかるだろっ」
また、おなじ声だ。ほかに人がいるけはいもないので、どうやらひとりでしゃべっているらしい。どれもこれも使用中なので、掃除しようにもできない、それで怒っているにちがいない。だれも出てこないので、あんなにびしょびしょになるまで床を掃除してしまったんだ……そうなると、なんとも出ていきにくい。こんな人にはなにをされるかわからない。だれかが出ていってくれれば。おばさんがそこを掃除しているそのすきに。……だれかが? そうだ、あの中にはみんな、だれかがはいっているんだ。
便器にすわってしずかにようすをうかがっていると、近くからごっつんごっつんいう音がひびいてきた。おばさんはとうとうこらえきれずに、モップかなにかでドアをたたきはじめたようだ。これじゃあいよいよトイレからでられない。アヤタンはとっくにトイレをすましてしまっただろうか? またおいてけぼりにされてしまうのだろうか? それでもカカシには耳をすませることしかできない。
 

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