あ、1本いいっすか?

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2010/10/19

カンナとカカシ(5)

投稿者 Chijun   10/19/2010 0 コメント
――こんなとき、女の子にはどうしてあげたらいいんだろう?
 なでながら、カカシはあれやこれやと考えたり、あっちこっちきょろきょろ見回したりしていた。
 この部屋もおなじだった。でんき電灯もないのに、ずいぶん明るい。かべはいちめん真っ白で、ぴかぴか光っているみたい。ただまんなかで、ちいさなカンナがうずくまっているだけ。ここには……ここにも、なにもない。ドアも……ドアがない!? 入ってきたはずのドアが、すっかり消えてなくなっている。
「おててがおるすになってるよ?」
 気づくと、カンナが顔を上げてカカシをじっと見つめている。カカシはおにいさんなのに、まるであわててしまってね。
「ドアが……ドアがないんだ! さっきまでそこにあったのに。じゃなきゃぼくがここにいるわけないじゃないか!?」
「ドア? カカシはなーんにも知らないんだね」カンナはぴょんっと立ち上がって、スカートをぱたぱたした。「いいわ、カンナが教えてあげる!」
 そういうとちいさなカンナはカカシの手をぎゅっとにぎり、かべにむかって走りだした。
――あぶない!
 カカシの頭を、すっころんだジェントルマンの姿がよぎる。白いかべがどんどん迫って来て、カカシの目はまっしろでいっぱいになる。思わず目を閉じたけど、それでもカンナは止まらなくて、どうやら今はかべのなかにいるみたいだ。



 目をあけると、さっきのろうかにもどっていた。カカシはためしにじぶんの両手を閉じたり開いたりしてみたけど、なんともない。
「ほらね。だからいったでしょ!」カンナはほこらしげに笑っている。「カンナえらい?」
「ああ、とってもおりこうさんだね」
「じゃあ、ごほうびちょうだい!」
……なにが欲しいの?」

「楽園のおいしい木の実が食べたいの」

……わかった。いっしょに採りにいってあげるよ」
「それはできないわ」
「え?」
「カンナはね、じぶんのお部屋でおるすばんしてなきゃいけないの。ひとりぼっちだけど、いいこにしてるの」
「じゃあ……」カカシはここにきたばかりでちょっと不安だったけど、勇気を出していった。今日はカンナの誕生日でもあるのだから。「場所を教えてもらえるかな?」カンナはいったい何歳になったのだろう? じぶんの半分くらいに見える。
「いいわ。ろうかを右側にまっすぐあるいて、エレベーターにのるの。いちばん上の『30』を押して、ついたらまたまっすぐあるく。そしてまたエレベーターにのる。いちばん上の『30』を押して、ついたらまたまっすぐあるく。そしてまたエレベーターにのる。いちばん上の『30』を押して、ついたらまたまっすぐあるく。これを三十三回くりかえすの。そうして最後は、『13』を押すのよ。カカシがあるく道のりは、合計で七百三十歩だわ」

 

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