あ、1本いいっすか?

Next Writer:Chijun

up-date: Sun, 18, Mar.


Next Writer:Chijun

up-date: Sun. 18, Mar.

2010/08/27

エンドオブザデイ

投稿者 じん   8/27/2010 0 コメント
終りにしたくない日がある。
特別楽しかったわけでもないのに、終わらせるのがもったいないような夜がある。

家に帰るなんてもったいない。
どこでもない場所の景色にとけこんで、ひんやりした空気を感じていたい。
気が付くと終点まで来ていた。

「少し町をふらふらしよう。」

そんな風にして15分ほど歩いて、たどり着いたのは結局駅の出口の横。
大きなビルの、植え込みを囲むブロック。そこがぴったりに思えた。

人影はまばら。

音楽を聴くでもない、本を読むでもない。ただぼぉっと座っている。

周りには同じように行き先を見失ったように動かない人がいる。
男が一人。女が一人。
仲間に出会ったようで、妙に嬉しい。

「なんだかおかしな夜だよ。分かるんだろ、お前も。」

しばらくすると男と女が楽しげに話し始めた。
顔見知りだったのだろうか。それとも通じ合う何かがあったのだろうか。

裏切り者、と心のなかで呟く。

2010/08/22

投稿者 福田快活   8/22/2010 0 コメント
夏がおわる。

空気は湿気だけをふくみ、太陽からそそぐ熱はもうたいしたことないから、夜は涼しい。ヤ、正確には暑くない。高い湿度はいっこうさがらず、むしろあがってる気さえするほど、気中の蒸気が膚にからみつく。膜みたい。

うほ、もう涼しくなんだな、の秋への期待がそのまま夏のおわりを自覚させるーーやりのこした、みすごした夏はないだろか?海にはいったか?チチとかケツとかおがんだか?かき氷はたべたか?花火は?浴衣?ン?数歩あしをまえに投げただけで、シャツが背中にへばりついてくる?ほ、こりゃやったわ。毎日やったわ。外と中の温度がちがいすぎて、電車ン中、ビルン中で奥歯ガチガチ鳴らしたわ。

ひとが夏を満喫してよがしてまいが、夏は秋に衣替える。蟬はステージを去り、こおろぎはチューニングする。これは感傷?だったら、秋はもうはじまってる。

いち、に、さーん、shit!!

2010/08/16

カンナとカカシ(2)

投稿者 Chijun   8/16/2010 0 コメント
 お父さん、お母さん……。カカシは泣いていたようだった。ほっぺたがぱりぱりするのは、涙がかわいたあとだ。
 気づくとカンナと二人しろくてせまい部屋にいて、出口もなくてどうしようもなくて、となりにすわりこんで、……いつのまにか眠ってしまったんだ。夢のなかでお父さんとお母さんに会ったような気もするけど、夢のなかみはなにもおぼえていない。
「お父さん、お母さん……」カカシは声に出してつぶやいてみる。
 オトウサン、オカアサン、オトウサン、オカアサン、オトウサン、オカアサン……

 オトーサン、オカーサン!!
 突然こだまが大きくなって、カカシは心臓ごと飛び上がった。見ると目の前に知らない男の人が立っていたんだ。教科書で見たことのある白黒の写真の、「ジェントルマン」みたいなかっこうをしたおじさんが、にこにこ笑っている。
「わたしはね君のオトーサンではないよ、もちろんオカーサンでもない。強いていえばオトーサンにちかいということになるのだろうが、仮に、仮にだよ、わたしが君のオトーサンである可能性があるとしよう、しかしその程度の可能性ということで話をすすめるのなら、オカーサンの可能性もけっして捨てきれるものではない、そうじゃないかい? だってこんな時代だからね。見た目だけじゃ決めつけられないじゃないか! ……くふっ」
 一息でそこまでまくしたてると、ジェントルマンはこらえきれないように口から息を小さくはきだし、こちらの反応をじっとうかがっていた。少年が目をまるくして口をひらいているだけなのが信じられない、といったようすだ。
……たしかに君はいい子なのかも知れない、ひとの話は黙って最後まで聞く、まじめにそれを実行しているつもりなのだろうからね。ふむ。じっさい、りちぎなこどもというのはいるものだ。君もそうやって目立たないようにしてきたんだろ? でもね、今ここにはわたしと君の二人しかいないんだ。いいかい、ふたりっきり、ってやつだよ。だとしたら、かくれようとしたってむだじゃないか? わたしの目は、しっかり君をとらえている。すなおになって、おじさんとコミュニケーションしようじゃないか。笑いたいときは、大きな声を出して笑ってかまわないんだよ。それとも、大人の理想でぬりかためられたステレオタイプのこどもを演じるのは本意じゃないとでもいうのかい? おいおい、君ももう少し大人にならなきゃいかんな。さっきの女の子みたいに」
「カンナ!?
 となりを見ると、さっきまですわっていたはずのカンナがいない。
「ほらね、やればできるじゃないか。わたしはね、教育というものに関心をもっている。やれ、といったところで、こどもはなかなかそのとおりにしてはくれない。この場合でいえば、話してごらん、といってみたところで君はだんまりをきめこんだままだったろう。とくに君のようなはにかみ屋さんの場合にはね。この原則は、ひろく応用可能なものだ。勉強しなさい、といって勉強してくれるのなら、そんなに簡単なことはない。勉強したくない? そっかそっか。じゃあやめようか? ときにはそういってみることが有益なこともある。もちろん、その子の性格や個性におうじて臨機応変に対応しなけれなばらない。そしてこどもの個性というものは、こどもの数だけ無限にある。(だからこそ教育というものは底なしに興味深いものなんだ)ところが多くの大人は、こんなに簡単なことをしょっちゅう忘れてしまう。しかしそれも仕方ない。それが大人というもの、すなわち、大人の限界というものだからね」
 ジェントルマンは最後にやさしくほほえむと、ドアのない部屋の、壁に向かって歩き出した。カカシはだいじなことを口に出せないまま、おじさんの大きな背中を見ていた。
――おねがい。ぼくをひとりにしないで……
 カカシが心のなかでそういうと、ジェントルマンは壁に激突し、その場ですっころんでしまった。
「いい加減になさい! まったくなんて子だ。わたしにも都合があるんだ、しかし……まあいい。たしかにこのままかべをすり抜けられるほど、話は単純じゃない。それにしても、うーん。……なんて醜いこどもなんだろう。あの女の子とはおおちがいだ。……カンナはじつに美しい」
 カカシはだいじなことを思い切ってたずねた。「カンナはどこにいるの?」
「きみのお父さんとお母さんは、ある意味どこにでもいるし、ある意味どこにもいない。みんなおなじ……君のカンナだって、おなじことさ。あせることはない。時間はたっぷりある。世界は終わってしまったんだ
 言い終わらぬうちにジェントルマンは、スイッチが切れたかのようにぷつりと消えてしまってね。カカシはほんとうにひとりぼっちになってしまったんだ。

2010/08/10

車掌の仕事

投稿者 じん   8/10/2010 2 コメント
車掌の仕事

「進行方向右手に、花火をご覧いただけるかと思います」

 電車が中河原をすぎた頃、突然、車掌はそんなアナウンスをした。瞬間、2人組のいかついお兄さんが、子供のようにはしゃいで、座席の上に膝立ちで、すげーっ、特等席だ!っと叫ぶ。眠りこけていたおじさんが、何事かと後ろの窓を振り返る。

 タイミングを見計らっていたかのような大玉の花火に、僕もしばしみとれる。

 新宿のホームへ降りるときに、平日の夜に花火で遅延とは迷惑な、と悪態をついていたのだが、車掌の粋な計らいと、車内の光景に、目を細めた。

2010/08/04

投稿者 福田快活   8/04/2010 0 コメント
高度な工業にむすびつく煙と排気ガス、悪臭を放つ汚水がよどむ道ばた、食べかすが浮いてる。人の雲脂とか獣の毛とか土埃、太古から変わらないものが浮いている。

あ、あそこで立ちションしてるやつもいる。横でデジタルサイネージが話しかける。

そういう文明と原始のミクスチュアが近未来ディストピアの魅力だとしたら(人間なんてどこな高度な文明になっても地べた這いずり回ってンだぜ!という叫びでもある)、それが近未来ならぬ現在にあるんだ!ってのが工業地帯の魅力だろう。

写真は堺泉北臨海工業地帯

ブラック・レイン』で異彩をはなってたキリンプラザから数十分。
 

もらいたばこ─┛~~ Copyright 2009 Reflection Designed by Ipiet Templates Image by Tadpole's Notez