あ、1本いいっすか?

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2010/05/26

つぶつぶ

投稿者 じん   5/26/2010 2 コメント
 少し前に流行った脳科学の文庫本。本棚の奥から引っ張り出して、少しだけ読み進めていたら、体が溶けていくような感覚に陥った。人間の心はニューロンの発火だ。生命活動は化学現象で、肉体は原子の寄せ集めだ。そんなことを考えているうちに、自分と自分以外の境界線があいまいなもので、自分の存在が自然現象の一つのように思えた。鼻の穴で、冷たい空気の流れとして、原子と原子の交流を感じる。

 自分が自分だと思っているつぶつぶの塊が、別のもう少し緩やかなつぶつぶの集まりをかき分けながら歩いていく。向こうからまた別のつぶつぶの塊がやってきて、少し離れた所から、緩やかなつぶつぶを震わせ、その振動が僕のつぶつぶを震わせる。僕もまたつぶつぶを震わせて、あいだのつぶつぶ同士震えを伝え合って、やがて相手を震わせる。繰り返すうち、僕のつぶつぶの震えはだんだんと激しくなる。震えて、震えて、やがて、弾け飛ぶ。

 弾けたつぶつぶの震えは、さらに周囲のつぶつぶを震わせて、共鳴し、次々とつぶつぶの塊を弾けさせる。

 弾けたつぶつぶはお互いぶつかり合いながら、ピンボールのように駆け回り、やがてまた寄り集まって、いくつかの塊と、そのあいだを埋めるゆるやかな集まりとなる。弾けて飛び回る前とは少し違う組み合わせで、似たような形の塊になる。こうしてつぶつぶの塊である僕らは、あらゆるものと少しずつつぶつぶを交換していく。

 休日の午後、たまの読書の合間、そんな実のないことを考えていた。
 

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