あ、1本いいっすか?

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2010/09/27

カンナとカカシ(4)

投稿者 Chijun   9/27/2010 0 コメント
 女の子は泣きやんで、きょとんとした顔でじっとこちらを見つめている。
「お兄さんはほんとのほんとはお姉さんなの?」カカシよりも、ずっとおちついた声だった。
 女の子の顔は、カンナにそっくりだった。でも、カンナよりはずっと幼くて、そう、まるでカンナの時計をまきもどしたような顔だった。
……カンナ?」
 女の子は首をふった。「あたしはね、じぶんのお名前しらないの。『カンナ』ってお兄さんの好きなひと? すてきなお名前ね。きーめた、あたしもそれにする!」
……君は、どうして泣いて……
 カカシが言い終わるまえに、女の子はくびをかしげた。
「なんで『カンナ』ってよばないの?」
 カカシはなんだか恥ずかしい気がしたけれど、女の子がほんとうに不思議そうな顔をしているので、「カンナちゃんはどうしてあんなに泣いてたの?」と、あらためて聞きなおした。
「カンナね、お誕生日なのにひとりぼっちなの」



 十二歳の誕生日。



「そっか。じつはぼくも誕生日だったんだ。昨日だったかもしれないし、一昨日かもしれない。それはよくわからなくなっちゃったんだけどね」
「じゃあいっしょだね」
 元気にそういうと、ちいさなカンナはにっこり笑った。



 恥ずかしがり屋のカカシだけど、ちいさなカンナのまえではどんどん声が出てきた。
「あんまりさむかったから、足がつめたくてじんじんするし、あたまはぼうっとしちゃって――気がついたらここにいたんだ。ぴかぴかのかべにふたりでとじこめられて――それで、それでね、カンナの手はとても小さくて、ぼくの手はここのせいで冷たくなってしまって――そうそう、そこはでんき電灯もないのにずいぶん明るい部屋で――目がさめたらひとりぼっち――そしたらおじさんが現れて(いつから部屋にいたんだろう?)、おじさんはカンナのことを知っていた。おじさんのつぎはやさしいお兄さんで、でも電話なんだけど――おかげで最初の部屋を抜け出せたんだ」
 ききたいことはたくさんあった。ここはいったいどこなのか? カンナはどこへ行ってしまったのか? おじさんはだれ? おにいさんはだれ? ぼくは……ぼくは、いったいどうすればいい?
 が、あせっていっぺんに話しすぎたせいで、女の子の頭のなかではいろいろなことばがかけめぐり、からまってしまったようだ。それに、なにかたいせつなことを説明し忘れてしまった気もする。
……カカシはとってもさびしいんだね」
 それだけいうと女の子はまたうつむいてしまった。こどものあつかいはどうもむずかしい、そう思ったとき、カカシはすこしだけ大人になった気がしたんだ。
 カカシはちいさなカンナの頭にそっと手をおいて、ゆっくりとなでてあげた。それでもカンナは顔を上げようとしないので、こんきよく、ずっとずっと、カカシはなでつづけた。

 

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