あ、1本いいっすか?

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2010/12/20

Like the norwegian wood

投稿者 じん   12/20/2010 1 コメント
作品の世界観に惚れ込んだ一読者が、その作品をモチーフにとったノルウェイの森的映像作品。

先日公開された劇場版『ノルウェイの森』を観てきました。

原作を何度か読んだことがあり、好きだという人ならこんな感想を持つのではないでしょうか。

「有名な作家の人気のある作品だから読んだことないけど見てみよう」と思ってる方には、正直言っておすすめしません。

この劇場版は原作で描かれているストーリーを描こうとしたものではないので、ある程度読み込んでいないと、ついていけません。原作にある要素をコラージュ的に貼り合わせて、原作で描かれる「事情が込み合っていて身動きがとれない状況」を2時間を通じて表現したものとしてとらえるのが良さそうです。

原作のファンはこの映画をきっかけに自分の好きな『ノルウェイの森』について語り合ってみると、鑑賞後の疲れがとれるかも知れません。たぶん監督もそれを望んでいるでしょう。あー疲れた。

ノルウェイの森のように暗く先が見えない。手探りで動き回った末にようやく開けたところに出たけれど、自分がどこにいるのかわからない。

「あなた今いったいどこにいるの?」

2010/12/13

曖昧なピンホールカメラ

投稿者 福田快活   12/13/2010 0 コメント
ピンホールカメラってご存じかしら?

レンズがなくって、小さな穴を通して集まった光を感光素材に焼き付けるだけ。それだけのシンプル、原始的なカメラ。ファインダーなんてないからカメラがとらえてる範囲なんて全然わかんないし、ぼくはふつーのデジタルじゃないカメラフィルムをつかってるんだけど、一枚撮るたびに自分でつまみを巻いてフィルムを先送りしないといけない。フィルムは現像にださないといけないから、出来上がるまでにまた間がある。とても不自由なんだけど、その不自由さはぼくをゆったりさせるし、できあがった写真の光はやわらかく、輪郭は曖昧で、きれい。デジタルだと色も光も形も、まあそれはぜんぶ光なんだけど、くっきりと、肉眼より明確に映しだすのがしょうじき居心地悪かったりする。不自然な。

デジタルは0と1で分断されてて、アナログは現実そのままののっぺり、音源とかだとそういう風にひとむかし前は言われたりしたけど、デジカメで撮った写真の異常なくっきり感とピンホールカメラの欠落感は、いっけんデジタルの方が地続きで、アナログ=ピンホールカメラの方が分断されてる印象をあたえておもしろい。でもそれでもデジカメの異常な鮮明さは、どれだけ緻密になっても残ってしまう0と1のあわいに由来するのかもしれない。ピンホールカメラが写しきれないものは沢山あるんだけど、やさしく、気持ちを落ち着かせるのは自然だから、かもしれない。そうすると自然ってなに?やさしいってなに?ってなってぼくにはそれの答えはないんだけど、気にはなって、撮ることで答えがみつかるとも思わないけど、ピンホールカメラで写真を撮り続けるんだと思う。曖昧な、はっきりしない写真を求めて。

2010/12/02

カンナとカカシ(7)

投稿者 Chijun   12/02/2010 0 コメント
ふたりが夢中になって話をしているので、カカシはそっとわきを通り抜けようとした、けれどそこで、たいへんなことに気づいた。うとうとしていたのととつぜんのさわぎのせいで、何回エレベーターにのったのかすっかり忘れてしまったんだ。このままでは楽園にもいけないし、カンナのところにも帰れない。
「やだーこの子泣きそうじゃーん」
「うそーちょっとかわいくなーい?」
「ぼくどこから来たの?」

「ぼくは……」とつぜんたずねられて、カカシはおねえさんたちにいっしょうけんめい答えた。カンナのためにも、恥ずかしがってちゃだめだ。「ぼくは……あんまりさむかったから、足がつめたくてじんじんするし、あたまはぼうっとしちゃって――気がついたらここにいたんです。ぴかぴかのかべにふたりでとじこめられちゃって――それで、カンナの手はとても小さくて、ぼくの手はここのせいで冷たくなっちゃって、目がさめたらひとりぼっち――そしたらおじさんが現れて、おじさんはカンナのことを知っていたんです。おじさんのつぎはやさしいお兄さんで、でも電話なんだけど――おかげで最初の部屋から抜け出せたんです。でもやっぱりぼくはひとりぼっちのままで……」お姉さんたちはうんうんうなずきながら、カカシのことをやさしく見つめてくれている。勇気づけられたカカシは「そしたらちっちゃなカンナに会えたんです! 今日はカンナの誕生日だから、ぼくは花を採りにいかなきゃいけない」

「まあ!」
「まあ!」

ふたりは声をそろえて、手を鳴らした。「ぼくはだいじな人のためにお誕生日プレゼントをとりにいくところなんだね、いいわ」といってうなずきあって「わたしたちが手伝ってあげるよ!」といってくれた。



「わたしたちがここにきたのはいつのことだったかしら……まあ、そんなのはもうどうでもいいことだけど」
ふたりが話しているわきで、カカシは廊下をあちらこちら見ていたんだけど、それはいままで見てきた廊下とすっかりおなじ、ドアがずっと一列にならぶだけの廊下で、何度エレベーターでのぼってもかわらない。
「……おねえさんたちの話きいてる? だめだなあ、女の子の話はちゃんときいてあげなきゃ。まあいいわ。とくべつに許してあげる。そんなにここがめずらしい? きみはここに来たばかり? どうしてここにやってきたの?」
もうひとりが、小声でささやく。「ねえ、この子さっきからぜんぜんしゃべらないじゃない。あたしつまんなーい」どちらがミカチンでどちらがアヤタンだったか、もうカカシには区別がつかなくなってしまった。
「……それ、なに?」そういうと、ひとりがカカシのポケットをゆびさした。ポケットに携帯電話が入っているのを、カカシはすっかり忘れていたんだ。もうひとりが、ポケットからちょこっと顔を出しているのをさっと奪った。「ふーん。ずいぶん大きいのつかってるんだね。でもね、むかしはもーっともーっと大きかったんだよ。携帯なんてできないくらいに。イヒヒヒヒ」

 

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