「やだーこの子泣きそうじゃーん」
「うそーちょっとかわいくなーい?」
「ぼくどこから来たの?」
「ぼくは……」とつぜんたずねられて、カカシはおねえさんたちにいっしょうけんめい答えた。カンナのためにも、恥ずかしがってちゃだめだ。「ぼくは……あんまりさむかったから、足がつめたくてじんじんするし、あたまはぼうっとしちゃって――気がついたらここにいたんです。ぴかぴかのかべにふたりでとじこめられちゃって――それで、カンナの手はとても小さくて、ぼくの手はここのせいで冷たくなっちゃって、目がさめたらひとりぼっち――そしたらおじさんが現れて、おじさんはカンナのことを知っていたんです。おじさんのつぎはやさしいお兄さんで、でも電話なんだけど――おかげで最初の部屋から抜け出せたんです。でもやっぱりぼくはひとりぼっちのままで……」お姉さんたちはうんうんうなずきながら、カカシのことをやさしく見つめてくれている。勇気づけられたカカシは「そしたらちっちゃなカンナに会えたんです! 今日はカンナの誕生日だから、ぼくは花を採りにいかなきゃいけない」
「まあ!」
「まあ!」
ふたりは声をそろえて、手を鳴らした。「ぼくはだいじな人のためにお誕生日プレゼントをとりにいくところなんだね、いいわ」といってうなずきあって「わたしたちが手伝ってあげるよ!」といってくれた。
「わたしたちがここにきたのはいつのことだったかしら……まあ、そんなのはもうどうでもいいことだけど」
ふたりが話しているわきで、カカシは廊下をあちらこちら見ていたんだけど、それはいままで見てきた廊下とすっかりおなじ、ドアがずっと一列にならぶだけの廊下で、何度エレベーターでのぼってもかわらない。
「……おねえさんたちの話きいてる? だめだなあ、女の子の話はちゃんときいてあげなきゃ。まあいいわ。とくべつに許してあげる。そんなにここがめずらしい? きみはここに来たばかり? どうしてここにやってきたの?」
もうひとりが、小声でささやく。「ねえ、この子さっきからぜんぜんしゃべらないじゃない。あたしつまんなーい」どちらがミカチンでどちらがアヤタンだったか、もうカカシには区別がつかなくなってしまった。
「……それ、なに?」そういうと、ひとりがカカシのポケットをゆびさした。ポケットに携帯電話が入っているのを、カカシはすっかり忘れていたんだ。もうひとりが、ポケットからちょこっと顔を出しているのをさっと奪った。「ふーん。ずいぶん大きいのつかってるんだね。でもね、むかしはもーっともーっと大きかったんだよ。携帯なんてできないくらいに。イヒヒヒヒ」
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