あ、1本いいっすか?

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2010/05/10

チャック・パラニク(チャック・パラニューク)3

投稿者 福田快活   5/10/2010 0 コメント
さて、このパラニクのシリーズも最終回。『インビジブル・モンスターズ』を書くためにダイヤルQ2して、色んなひとの変態話を収集してたってとこまでが前回。変態話はまた「真実」の物語でもあった。そして世界は物語る人々で出来てる、とか。

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4冊目の本『チョーク』の下調べするあいだ、セックス中毒者のおしゃべりセラピーに週2回、6ヶ月間参加した。水曜と金曜の夜。

多くの意味でこの雑談会は、ぼくが参加してた木曜夜の作家ワークショップとあんま違わなかった。どっちの集まりもただ「自分の物語する人たち」だった。セックス中毒者はひょっとしたら技巧にあんま関心がなかったかもしんない、でも数多の風呂場セックス・売春婦の物語して、観客からいい反応をひきだす腕はもってた。多くの人はもう何年も集会で語ってきたもんだから、耳をかたむけると、そこには素晴らしい独白が在った。抜群の役者が彼―彼女自身を演じてる。1人芝居のモノローグから本能が感じられるんだ――ゆっくりと明かされる重要な情報、創られてゆく劇的緊張、ヤマ場を組みあげて、聴衆を完全に巻き込む本能。

『チョーク』のときはボランティアとしてアルツハイマー患者とも同席した。ぼくの役割はただ患者がみんなクローゼットん中の箱にしまってる古い写真について聞くだけで、彼らの記憶を試し、刺激しようとしてた。看護スタッフには時間のない仕事だった。この仕事も、「物語を語ることについて」だ。日がな日がな同じ写真をみるんだけど、患者がちがう物語をするうち、『チョーク』の脇筋が出来あがっていった。ある日だと、美しい胸も露わな女性は彼らの妻だった。つぎの日、彼女は海軍に勤めるあいだメキシコで出会った女だった。その次はむかしの同僚だった。ぼくが打ちのめされたのは・・・「彼女が誰か説明するためには、話を創るほかないんだ」ってこと。もし忘れちまってても、絶対に認めなかった。穴だらけのウマク騙られる物語はいつだって、「そんな女憶えてない」って認めるよりましだ。

ダイヤルQ2、病気支援グループ、12段階グループ、これらの場所はぜんぶどうやったら効果的に物語を伝えられるか、まなぶ学校だ。声に出して。人前で。ただアイデアを探すんじゃなくて、どう演じるか。

ぼくらは物語に寄っかかって人生を生きてる。アイリッシュであること黒人であること。ぎっしり働くこと、ヘロイン打つこと。男であること女であること。ぼくたちの物語を支える証拠さがして人生をすごしてる。作家やってると、ただそういう人間のありかたが分かるんだ。キャラクターを創るたび、そのキャラクターとして世界をながめる、そのリアリティーをたったひとつの本当のリアリティーにする細部を探す。

事件を法廷で争う弁護士のように、読者に自分のキャラクターの世界観の真摯さを受けとめてもらいたくて、代弁者になる。読者を、彼ら自身の人生から休憩させたげたいんだ。彼ら自身の物語から休ませたげたい。

ぼくはこうやってキャラクターを創る――どうもぼくはキャラクターひとりひとりに、世界の見方を制限する教育や技術をあげたがるみたいで:清掃人は落とさなきゃいけない汚れの繰り返しとして世界を見る。ファッションモデルは社会の注目を競うライバルの繰り返しとして世界を見る。落第医学生は末期病の予兆かもしれない黒子と引きつり以外、なんにも見ない。

ちょうどぼくが書きはじめた同じ時期に友達と毎週恒例の「ゲーム・ナイト」ってのを始めた。毎日曜午後、集まってパーティー・ゲームをするんだ、ジェスチャーゲームとか。一向にゲームをはじめない夜もある。ぼくたちが欲しかったのは口実と、時には仕組みだけ、一緒にいられるように。書き物でいき詰まってたら――どうしたら新しいテーマを作り上げれるか?――あとで「みんな種まき」って呼ぶようになるコトをした。会話のトピックを場に投げ出して、こっちから短いおもしろ話をしたりして、他の人に自分のを話すよう刺激する。

『サバイバー』を書いてて、ぼくがトピック;掃除のコツを持ち出す、するとみんな何時間も教えてくれる。『チョーク』のときは暗号化された警備放送。『ダイアリー』のときはぼくが作った家の壁の中に見つけた;置いてったものの話をした。両手一杯のぼくの話を聞いて、友達も話してくれた。お客たちもしてくれた。夕方になれば、もう本にするに十分だった。

こうすると、孤独な営為「書く」も人のまわりにいる口実になる。順ぐりに人が物語にガソリンくれる。

独り。一緒。事実。フィクション。これは環だ。
喜劇。悲劇。光。闇。たがいを定義する。
効くよ。ただ、どっか一つ所に停滞しなけりゃ。
 

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