LA LA MEANS 月が綺麗ですね
これは冗談として。
"I LOVE YOU"を「月が綺麗ですね」とでも訳しておけといった漱石は素敵で、その精神が"LA LA MEANS I LOVE YOU"にもあると思う。
■言葉の背後にある想い
表現された言葉には、表面上の意味と、その言葉から汲み取ってもらいたい想いがある。"I love you"をどう翻訳するか尋ねられて「月が綺麗ですね」とでも訳しておけと答えた漱石は、この構造をはっきりと感じていた。坊っちゃんがエキセントリックなおねーちゃんに向けた言葉もこの類いだろう。
■LA LA MEANS I LOVE YOU
"La la... means I love you"と歌い上げるあの曲の"La la..."も「月が綺麗ですね」と同じように、表面上の意味ではなく、背後の想いありきの言葉である。はっきりと"means I love you"と歌詞にして説明してしまう辺りが、日本人としては若干「やぼ」と感じてしまうが、その心には大きくうなずける。
映画INTO THE WILDで、ヒッピーの娘と主人公がコンサートで同じステージに立つシーンは、下手なベッドシーンよりも濃厚なラブシーンとなっていて、胸が熱くなる名シーンだ。
■LA LA MEANS I LOVE YOUはなぜやぼか
"La la means I love you"という表現が「やぼ」なのは、その場に居合わせて場を共有していれば分かるだろうことを説明してしまったことにある。
日本語は、聞き手に話し手の世界を共有することが求められる言語である。見てわかること、当然のことは言葉にしない。代名詞で示してしまうことの多い英語と違い、日本語ではそういうものを言葉にしない。
この辺り、日本語で仕事ができるほどの英語ネイティブでもやはり難しいようで、誰の腕なのか、何処に触ってはいけないのか、「このニホンゴは英語になりませんね」と苦労している。「不思議なニホンゴを発見したんですが…」が口癖になっているので、日本語スピーキング力にはややなんありではあるが。
■そもそも比べて良いのか
英語でも、"la la..."と歌ったあとに、本人が今のはこういう意味だったんだよ、と説明するようなことはしないだろう。しかし後から解釈をしてそういう説明的な歌詞を書いたのだとしたら、他人が書いた"I love you"を「月が綺麗ですね」と翻訳することと比較して考えることは的はずれではないはずだ。